『帰国子女枠の入試と作文』について、言葉の森のHPより抜粋して紹介します。
大切なのは親子の対話
海外生活で何を経験したかということは、子供によってそれほど大きな差があるわけではありません。しかし、その経験がその後の自分の人生にどう生きているかという価値的な部分は、そういうことを考えたことのない子には書けません。
しかし、そのような考えを子供が自然にするようになる年齢は、もっとずっとあとです。そこで、家庭でその経験を話し合う必要があるのです。
帰国子女ですから、日本語の表記力そのものはそれほど厳しくは問われません。しかし、考える力そのものは、何語で考えても自然に出てきます。日本語で深い考えができない子は、英語でもほかの言葉でもやはり深い考えはできません。
その考えは、主に両親との対話の中で育ちます。帰国子女入試で作文対策をする場合、まず家庭でいろいろなテーマについて話し合う習慣を作っていくことが大切です。
作文の勉強法
作文の勉強は、自分の経験を文章化させるという形で進めていく必要があります。
方法としては、第一に、自分の経験をいくつも書いてその中からいいエピソードを絞り込んでいくということです。第二に、両親が自分の経験を補足して、子供の経験をふくらませてあげることです。第三に、やはり両親が子供の経験を、一般化した感想や意見の形に一度昇華してあげるということです。
作文に書く材料となるいい体験実例は、大きく分けて四つあります。一つ目は個性のある体験です。二つ目は挑戦のある体験です。三つ目は感動のある体験です。四つ目は共感のある体験です。挑戦のある体験がいちばん書きやすいと思います。共感のある体験とは、うまく行かなかったことや失敗したことをむしろ誠実に書くときに生まれます。
高校入試の場合は、作文の課題は、もっと考える内容になってきます。日本と海外の文化の違いを自分の経験を実例として述べられるようにしておくといういいと思います。そのためには、比較文化論に関する本を何冊か読んで自分の経験をある程度普遍化しておくといいでしょう。
文章力の本質は思考力です。文章力は、日本語が得意か苦手かということとは少し違います。どの言語であっても、考える力があるかどうかは文章やを読めばわかります。
中学入試、高校入試、大学入試とも、過去問をもとに予想問題を10本ぐらい書いていると、どういう課題が出ても材料の上では一応対応できるようになります。いろいろなテーマで書いた10本の作文を自分が納得できるまで添削して何度も繰り返し読んでおくのが勉強の仕方の基本になります。