春休み中(3/29)にそらまめの会(ディスカッション&作文の会 )を開催します。
今回の課題図書は『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。生徒さんからのおすすめで、この本に決定しました。
イギリスに住む日本人の著者(母)と、中学生の息子(ぼく)との日常を記したノンフィクション作品です。
本の帯に、「読んだら誰かと話したくなる」とある通り、考えるきっかけをたくさんくれる本ですね。
印象に残ったエピソードを引用します。
中学のシティズンシップエデュケーション(公民教育)の試験で、「エンパシーとは何か?」と聞かれ、ぼくが「自分で誰かの靴を履いてみること」と答える場面。
エンパシーとは、他人と自分を同一視することなく、他人の心情をくむこと、だそうです。
ぼくはエンパシーについて、こう話しています。
「EU離脱や、テロリズムの問題や、世界中で起きているいろんな混乱を僕らが乗り越えていくには、自分とは違う立場の人々や、自分と違う意見を持つ人々の気持ちを想像してみることが大事なんだって。つまり、他人の靴を履いてみること。」
続けて、シンパシーとエンパシーの違いについて、著者により説明されています。
「シンパシーのほうはかわいそうな立場の人や問題を抱えた人、自分と似たような意見を持っている人々に対して人間が抱く感情のことだから、自分で努力をしなくとも自然に出てくる。だが、エンパシーは違う。自分と違う理念や信念を持つ人や、別にかわいそうだとは思えない立場の人々が何を考えているのだろうと想像する力のことだ。」
シンパシーは感情的状態。エンパシーは知的作業。胸にストンと落ちました。
人種、障害、貧困…といった問題を考えるとき、相手をステレオタイプ化して、「シンパシー」を感じていることってないでしょうか。
無意識のうちに、自分の方が(いわゆる)多数派で、相手を受け入れて(あげる)側、になって考えていることも、ありそうですよね。
エンパシーは、よりフラットな視点。
大事なのは、相手に対するイメージや思い込みをすてて、曇りのない目で、相手を個人として理解しようと努める意識なんだろうと思います。
「多様性を尊重する社会の実現」というと、なにやら難しいですが、まずは自分の周りでできることから……
知らないことって、たくさんあります。知らなきゃ想像もできません。知ろうとする努力を怠らず、さらに、自分と違いを持つ人の立場になって想像することを繰り返し、いろんな違いを受け入れられる、広い心を持てるようになりたいですね。
他にも、イギリスの教育に驚いたり、ぼくの聡明さに感心したり、これは許しがたいとムカッとしたり、いくつもの印象深い場面がありました。
みなさんはどんなところが心に残ったのかな、聞かせてもらうことを、楽しみにしています。